「国文学 解釈と教材の研究」より 1



幻想文学」25号に記載あり。
残念ながら至文堂版『国文学』では「ファンタスティック・クオリティ」以降、幻想文学の特集がありません。
対する学燈社版『国文学』は、至文堂と比べやや後れを取ったものの、1984年の「夢のモルフォロジー」を皮切りに何度か興味深い特集を組んでいるようです。
冊数が少し多いので数回に分けて紹介します。
まずはこちらの2冊から。
1「幻想文学 夢のモルフォロジー1984 8月
2「幻想文学の手帖」1988 3月 (改装版『知っ得 幻想文学の手帖』2007)


1「夢のモルフォロジー
富山太佳夫高山宏四方田犬彦由良君美の後進たちが前半部に勢揃いしています。それぞれ独自の観点から幻想文学論を展開しており、読み応え十分です。本誌一番の読みどころと言ってもよいでしょう。それに比べて後半部の現代編は、枚数の少なさもあり、やや見劣りする内容となっています。
2「幻想文学の手帖」
もはやなりふり構わずといったところでしょうか。目次だけ見るととても国文学雑誌とは思えないような内容です。巻頭の「幻想文学キーワード」(高山宏)はなかなかの名文。一読忘れがたいものがあります。
幻想文学」でも触れていますが、【読み方】なんて書き方はやはり押しつけがましいし、興ざめですね。以後の『幻想文学の劇場』『現代幻想小説の読み方』に引き継いでほしくなかった。


内容
1「幻想文学 夢のモルフォロジー1984 8月
極私的幻想文学論 筒井康隆
対談・幻想のさきわう国に 中村真一郎/由良君美
現代文学における幻想とその病い 徳田良仁
幻想文学の空間――変化しつづける境界線 富山太佳夫
幻想文学・迷宮の言語都市 高山宏
幻想文学と決定不可能生 R・ジャクソン/四方田犬彦訳・解題
ラテンアメリカ文学・その祝祭空間 鼓直
獏の枕について 澁澤龍彦
古代における神話と伝奇のドラマツルギー 藤井貞和
王朝文学と悪霊の系譜――ことばのシャーマニズム 高橋亨
能における幻想の詩学 太田省吾
悪場所の原義――遊郭と芝居町 今尾哲也
読本・怪異表現とイラスト 河野元昭
幸田露伴泉鏡花――その幻想の差異 山田有策
夏目漱石内田百輭 石崎等
夢野久作埴谷雄高 紅野謙介
島尾敏雄古井由吉――幻想小説という幻想 鈴木貞美
澁澤龍彦中井英夫 千葉宣一
大江健三郎筒井康隆――幻想の現在 柘植光彦


2「幻想文学の手帖」1988 3月 (改装版『知っ得 幻想文学の手帖』2007)
きみをどこかへアッシャー・イン 高山宏
幻想文学キーワード 高山宏
作品論(執筆者略)
日本
土俗が迷宮を穿つ
幸田露伴「対髑髏」
泉 鏡花「草迷宮
坂口安吾桜の森の満開の下
島尾敏雄「夢の中での日常」
知性狂乱
江戸川乱歩「パノラマ島綺譚」
夢野久作ドグラマグラ
中井英夫「虚無への供物」
澁澤龍彦「うつろ舟」
夢/悪夢/ファンタジー
夏目漱石夢十夜
内田百輭「冥途」
宮沢賢治銀河鉄道の夜
埴谷雄高「死霊」
安部公房「壁」
村上春樹世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド
言語の過剰
井上ひさし吉里吉里人」
筒井康隆「虚航船団」
魔界/都市/地獄
佐藤春夫「西班牙犬の家」
三島由紀夫豊饒の海
石川 淳「狂風記
荒俣 宏「帝都物語
海外
土俗が迷宮を穿つ
ポー「アッシャー家の崩壊」
ストーカー「吸血鬼ドラキュラ」
ジェイムズ「ねじの回転」
知性狂乱
シェリー「フランケンシュタイン
カネッティ「眩暈」
ルーセルロクス・ソルス
夢/悪夢/ファンタジー
ヨハネの黙示録
ディドロダランベールの夢」
ホフマン「ブランビラ姫」
キャロル「アリス・ヒストリー」
カフカ「変身」
言語の過剰
ラブレー「ガルガンチュワとパンタグリュエル物語」
スターン「紳士トリストラム・シャンディの生涯と意見」
ピンチョン「V」
魔界/都市/地獄
スウィフト「ガリヴァー旅行記
ボナヴェントゥーラ「夜警」
ネルヴァル「十月の夜」
クービン「裏面」
《自己(ゼルプスト)》への旅
バルザックセラフィタ
メルヴィル「白鯨」
ヘッセ「デミアン
テクスチュアルな幻想
ボルヘス「伝奇集」
カルヴィーノ「宿命の交わる城」
バース「やぎ少年ジャイルズ」
エーコ薔薇の名前


たとへば京伝 須永朝彦
幻想文学参考文献案内 高山宏