サンリオSF文庫の本

サンリオSF文庫 1978〜1987
 キティちゃんで有名なあのサンリオが拡大戦略をとっていたときに誕生した。SFという読者層の限られる分野で、既存のハヤカワSF文庫、創元推理文庫に対し果敢にも勝負を挑んだが、約10年で力尽きる。
絶版になってからは、コレクターにより万単位で売買されることもあった。名作を出す一方で、訳の質が低い愚作を量産し玉石混淆と評される。背表紙に必ず付される火星人マークが何ともおしゃれ。

1『ジョン・コリア奇談集』ジョン・コリア 中西秀男訳
 ジョン・コリアを読めば、異色作家とは何なのかが分かる。異端文学を代表する作家と言っても過言ではない。短編の名手として知られる。
 最近では、河出書房新社から『ナツメグの味』が出るなど、再評価が進んでいる。個人的に思い入れのある作家なので、この調子で全集でも出してもらいたい。
 本短編集には、美女の生き血を吸うことに一生を捧げたノミが主人公の「名優ギャヴィン・オリアリ」、魔法のランプならぬ魔法の瓶を手に入れた男の悲劇「「フランクの買った瓶」など、ジョン・コリアの代表作が収録されている。後に再編集され、ちくま文庫で出版されたが、こちらも品切れ。早川の異色作家短編集『炎のなかの絵』であれば新刊書店でも入手可能.

ナツメグの味 (KAWADE MYSTERY)

ナツメグの味 (KAWADE MYSTERY)

炎のなかの絵 (異色作家短篇集)

炎のなかの絵 (異色作家短篇集)

2『妖精物語からSFへ』ロジェ・カイヨワ 三好郁朗訳
 幻想文学を研究する上で、サンリオSF文庫の中では最も重要な作品の一つ。解説は荒俣宏

SFを妖精物語以来、不可能なものへの変わらぬ希望と見るカイヨワの特異な論考。(帯より)

SFの根はどこにあるのか?カイヨワはそれに答えて、妖精物語から怪奇小説を経てSFに至る系譜をたどってみせる。妖精物語が発祥した中世世界では、魔法さえ日常生活の掟となってしまい、なんの驚異ももたらさない。だが現代のように科学的合理精神に支配された恒常的世界観に、一つの亀裂、一つの不可思議をもたらすこと――それも科学自体のもつ曖昧さと矛盾をつきつめていくことによって――現実界を破壊する妖精物語以来もちこされてきた変わらぬ人間の聖なるもの、不可能なものへの信頼と希望がSFに現代的な形で復活するのである。
シュルレアリズム運動による幻想的なものの祝祭を潜りぬけてきたカイヨワは、こうして石の断層に描かれた紋様、コノハ蝶やカマキリの擬態、夢の文法から想像力の核を横断する《昼の論理》と《夜の夢》を綜合する百科全書的な対角線の科学を確立したのである。(裏表紙より)