美神の館


『美神の館』ビアズレー著 澁澤龍彦訳 光風社出版 1984

夭逝した世紀末の天才画家ビアズレーが遺した唯一の小説。諧謔の精神に根差した怪奇美と幻想的な頽廃美を、あくまで典雅に装飾的に、そして人工的に表現し、「ビアズレーの絵画的世界をそのまま言語に置き換えた、ピトレスクな世界そのもの」と評される奇作。訳者による詳密な註と解題を付す。
(Amazon中公文庫版の内容紹介より)


桃源社版(1968)の復刻。函帯付きなら2000円くらい。
本の構成は作品半分、解説半分といったところでしょうか。訳注がかなりの割合を占めています。巻末には挿絵の名作集を収めており、ページ数で言えば『美神の館』そのものが成す割合は3分の1くらいです。話は未完のまま終わっています。
ところで『世界幻想作家事典』[ビアズリ]の項には『美神の館』の初訳として昭和43年(1968)、澁澤龍彦による美術出版社版があるとしていますが、「美術出版社」はおそらく「桃源社」の誤植かと思われます。まあ、厳密に確かめる方法もないので正誤の判断は保留ということで。
中公文庫(1993)からも出ているようです。絶版扱いですから気をつけてください。